アマチュアにいちばん近い「プロ」である レーシングドライバー澤圭太さんインタビュー後編

後編となる今回は、勝つために必要なことや、レースと仕事の共通点に加え、現在の活動、車、レース業界のことについて語っていただきました。

前編は、下記からご覧ください。

<プロフィール>
澤圭太。千葉県出身。レーシングドライバー。1998年に4輪レースデビューをする。2002年から全日本GT選手権(現SUPER GT)に参戦し、2003年にはGT300クラスで2勝を挙げてシリーズ2位を獲得した。2016年にはアジアン・ル・マン・シリーズのGTクラスにてシリーズチャンピオンを獲得。翌年からFIA 世界耐久選手権のLM-GTE Amクラスへフル参戦し開幕戦では初優勝を飾る。2017WEC 1勝含むランク2位、公式戦202戦(通算22勝、表彰台獲得約40%)。マカオGT優勝、Le Mans24hには 3回出場。2009年には、アマチュア向けのサーキットレッスン「ワンスマ」を設立、年間80以上の公募イベントを主催する。

勝つために必要なこと

勝つために重要なのは、いい車に乗ること、速い車に乗ること、強いチームに入ることです。

当然ですが、強いチームに入ると勝利回数は増えますよね。野球で例えると、強いチームにはいいピッチャーがいて、いい打者もいます。自分がどれだけ凄いピッチャーだったとしても、チームに打ってくれる人がいないと、絶対に勝利投手にはなれません。なので、「勝つ」ことにフォーカスするためには、強いチームの一員になることが重要です。
しかし、ここで忘れてはいけないことがあります。

それは、「実力」です。強いチームに入るためには、自分の実力がないと入れません。実力を磨き、強いチームに入り、いい車、速い車に乗れるようにするのです。まずは勝つために、「自分の実力」を磨き、勝てる環境で走ることを目指す。そして、勝てる環境の中でも勝ち続けるため、さらに「自分の実力」を磨く。そのサイクルを回し続けることが大切だと僕は考えています。

人生を学べる「レース」

レースをしていて強く感じるのは、レースというスポーツは、仕事や人生との共通点が多いということです。レースも仕事も人生も、準備と先読みが大切です。起きたことへの状況判断や、その瞬間により良い調整や選択をするという行為は、全ての事柄に共通していると思います。成功する法則や、うまくいく法則は、必ず共通点があると感じますね。

突き詰めると車を速く走らせることや、レースで結果を出すこと、仕事で結果を出すプロセスは全て同じ考え方です。

例えば、東京の新宿から蒲田(取材班の一人が蒲田に住んでいるため)までレースがあるとします。僕(澤選手)が軽自動車で、他の人にベンツやポルシェを乗らせたとしても、勝てる自信はあります。ゆっくり、燃費も良く勝ちに行きます。

速い車で、アクセルをガンガン飛ばして走ると、途中で給油しなくてはいけなくなるかもしれないし、余分にブレーキを踏んで車に負担がかかるかもしれません。

逆に、僕の車は速くないけど、裏道を知っていたり、この区間では左車線の方が速いなどという情報を持っていたりするので、目的地に対して無駄のない最適な走りができるんです。

実際にゴール地点についた時には、軽自動車で走った僕が一番先にゴールしています。

何が言いたいかというと、レースでも仕事でも、車の適性を知ること、コースについて理解するなどといった、事前の準備や情報集めが勝負を決めるということです。ゲームの仕組みや情報が事前にあれば、「結果を出すために何をすればいいのか」が見えてきます。そのためには、頭の回転を速くして、自分が持っている様々な情報や要素を組み合わせるように意識することが大切です。

アマチュアにいちばん近い「プロ」である

僕は、「アマチュアにいちばん近いプロドライバー」という立ち位置を確立していきたいと思っています。そこで生まれたのが「ワンスマ」というカーイベント事業です。参加者の方々には、サーキットで好きなように運転してもらうプログラムから、車の運転方法をアマチュアの方々に教える、レッスン色が強いプログラムを用意しております。

自分がしてきた様々な経験の中で、「車を自分の支配下に置いて、正しくコントロールする重要性」を学びました。なので、アマチュアの方々にはそういったところも伝えていきたいです。特にアマチュアの方々は、怪我をしたり、車を壊してしまうと競技を続けられなくなってしまいます。なので、まずは車を壊さず安全に、自分の技術の範囲内で楽しみましょう、ということを伝えています。

例えばゴルフでOBになった場合だと、ボールが1個なくなるだけです。しかし車の場合、上手く走れなくてOBになってしまったら、車がOBしてしまうとこを意味します。そして、最悪の場合は命を落とすことにもつながります。モータースポーツは、元々思いきって楽しもうとすることが非常に困難なスポーツなため、安全マージンをしっかりと取らなければ出来ないスポーツなんです。
しかしその中でも、イベントに参加してくださった方々に楽しんで頂けるよう、僕の技術は惜しみなく伝えています。

ドライバー以外に「車の魅力」を伝える

今回取材に来ていただいた「ワンスマ」(袖森フェスティバル)は、年に約3回のペースで開催しており、今年で10年目です。

以前は、サーキットを走るというと、日曜日の朝に男性が、こっそり家を抜けてきて走りに行くというイメージでした。しかし僕は、「サーキットを走る」というイベントを、家族や友人を巻き込んで楽しむ環境を作りたいという思いがありました。その思いが「ワンスマ」を始めたきっかけです。ただサーキットを走るだけだと、走る人はお金を払えば楽しめますが、走る人と一緒に来た方は楽しめません。しかし「ワンスマ」は、連れてきた人を楽しませるというコンセプトの元で運営しています。このイベントでは、グッズ販売、整体などのお店などが出ているので、走りに来た方はもちろん、その家族や友人も楽しむことが可能です。その中で、家族や友人が少しでも車の世界に興味を持ってくれたら嬉しいです。

稼げるレーサーではなく、「仕事ができるレーサー」である

スポンサーシップの話になりますが、現在のスポンサーシップはどうしても、レーサーにお金を出してロゴを出すという形が主流で、そこでだけで留まっているんです。しかし僕の場合は、「ワンスマ」というアマチュアの方々のためのイベントコンテンツを持っていて、スポンサーさんには出店も許可しているため、スポンサーさんに売り上げで貢献できます。そこが僕の強みだと思っていますね。スポンサーさんは、僕を応援すると、このイベントで売り上げを立てることができます。ロゴをつけるだけでは終わらないのです。

僕は、アマチュアに近いプロドライバーなので、僕に何かしてくれるとアマチュア(ユーザー)に直接PRできる仕組みが作れます。そして、僕のイベントに来てくれる方は、サーキット好きで、車も大好きです。しかも、そのような方々を、僕は何千人とイベントに呼ぶことが可能です。メーカーさんから見ても、そのような完璧なターゲット層の方々に直接商品をPRできるのは大きな価値になります。このように、コアなマーケットを生み出すことができるのが僕の強みです。すごくコアだけど、そのような方々をピンポイントで呼ぶことができ、明確なマーケットを産み出し、そのマーケットで自社の商品を販売できる。

これが、僕のスポンサーになる大きなメリットです。

僕が目指してるのは、稼げるレーサーになることではなく、「仕事ができるレーサー」であることです。レース界や車業界に価値を生み出し続け、「僕と関わってくれる、多くの人を勝たせる」そんな人間でありたいなと思っています。

ビジネスとレースの意外な共通点を聞いた時、レースは人生そのものだと感じる程の魅力を存分に語っていた澤選手。これからも車業界やレース界で様々なチャレンジをするそうです。そんな澤選手が主催するカーイベント「ワンスマ」の詳細は下記リンクになります。是非、目を通してみてはいかがでしょうか?

インタビュー・構成・文=佐藤靖晟

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この記事を書いた人

Sato Nobuaki

Sato Nobuaki

1996年、神奈川県生まれ。高校2年の夏にブラジルを訪れたことをきっかけに、海外行きを決意。その後サッカープレーヤーとしてイタリアとスペインに渡り2シーズン半プレー。現在は、通訳業や言語学習教師、取材・執筆活動を行う。